October 30, 2004

Randonneur Style / French Classic

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700Cスタイル」と題して、古いロードレーサーをいろんなスタイルに料理する過程を連載してきましたが、前回からだいぶ間が空いてしまいました。 それというのもパーツの変遷があまりに多くてスタイルが一定しなかったからなのですが、このへんでいったんまとめて、その後の魔物との戦いについて書いておかなくてはなりません。 (って、べつに誰が頼んでるわけでもないですが)


◇◇◇

そもそも、なぜそんなにパーツを取り替えるのか。と、自問してみる。
答えは簡単。 使ってみたいパーツが、まだそこにあるからだ。 手に入れたいと思うパーツが、まだあるからだ。 これはもうタチの悪い持病なのであって、財布とカミさんの顔色を窺いながら、じょうずに付き合っていくしかないのである。 これはしょうがない。

ところがもうひとつ、パーツを取り替えなければならなくなる理由がある。 「寸法」である。 スーツの胴回りが歳とともに変わってしまうように、自転車の寸法も体に合わせて変えざるをえなくなるのである。
歳とともに筋肉の付き方も循環器の性能もかわり、走り方もかわり、走りにいく場所も変わる。 そのままの寸法ではあちこちが合わなくなってくるものだ。 体を道具にあわせろ、といえるのは成長期の若いうちだけである。


さて、いったん完成を見たティファニー・スタイルのスポルティーフ。 スタイル抜群で、エレガントで、ちょっと古風な横顔をもつなかなかの美人なのだが、これが長い道を付き合っているとなぜか疲れるのである。 どうもスピードもでない。 いったいなぜか? やはり、いろんなところの「寸法」である。

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あまり舗装の良くないサイクリング・ロードや街道の路肩を走るには、カンカンに高圧のチューブラー・タイヤではちょっと神経質になりすぎる。 ちょっとしたギャップが気になり、ざらざらの舗装が気になる。 きれいな道しか走れない。

そして踏み込んでまわしていくとすぐに乳酸がたまってしまう、このアシ。 昔はもうちょっと無理が利いたんだけどなあ。 もうケイデンス(回転数)で稼いでいく乗り方でないと、まったく距離が走れなくなった。 それには、いまのギア比は高すぎる。 アウター52Tでは平地でもトップ・ギアに入らない。 追い風でもまだ重たいくらいだ。 強い向かい風の時には思わずインナーに落としてしまう。 ストロングライト93のインナーは最小で38Tまで。 もっと小さいインナーがないと、とても山には行けない。 ううむ、情けないけれどしかたがない。 長年の不摂生とトシにはそう簡単には勝てそうにないな。

さらに、どうしても首の後ろ、背筋が凝ってくるのはなぜか。 ハンドルがすこし遠すぎるようだ。 サドルにどっしりと座って足をくるくる回そうとすると、肩の位置が後ろに下がって腕が伸びてしまっているのだ。 ステムを短くしてもっと楽な姿勢がとれるようにしないとだめかもしれない。


しばし悩んだ末、なるほど人も自転車も見た目だけではダメだなあ。 と、ようやく気づいたのでありました。 気づくのが遅いよね。

しかたがない。 ティファニー・スタイルは、そのエレガントな姿を想い出のなかにしまいこんで、サヨウナラをするしかない。 涙をのんで、バイバイだ。 そのかわり気に入ったパーツしか使わないぞ。 と、心に決め、気合をいれて入札に臨むこと数ヶ月。 ほとんど、もう一台組み上げられるほどのパーツを集めてしまったのでした。 あらら。 でも、まあ昨今の新車価格を考えれば、お安いもんです。

そしてヤスリとコンパウンドで格闘することしばし。 できあがったのは、いわゆる 700Cランドナー というスタイル。 太めの 700C タイヤ、低いギア・レシオ、ランドナー・バーに亀甲パターンの泥よけ。 これにフロント・バッグをぶら下げれば、どこから見てもランドナーである。


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かりにもホルクス・レーサーとして生まれたこの自転車を、ついにランドナーにしてしまった。 横尾さんもビックリ。 それよりビックリなのは、 700C サイズの自転車はこれほど変幻自在なのだ、ということである。 26HE サイズではレーサーにはなれないし、ましてや 650サイズはランドナーにしかなれない。 しかし700Cならレーサーにでもランドナーにでもなってしまう。

ロード・レースを中心にして進歩してきた自転車の歴史を思えば、それは当然のことなのかもしれないけれど、 昔も今も700Cサイズのホイールをはいた "700C スタイル" が、いちばんツブシが効くスタンダードなのである。 時代が変わっても、そのことはちっとも変わっていないんじゃないだろうか。 700C サイズのフレームを一本あつらえてしまえば、それはどのようにも仕立て直しがきく。 どうやら、そういうふうに自転車というものは成り立っているようである。

さてこの 700Cランドナー、見た目はどことなく平凡でちょっとつまらないけれど、ちゃんと磨き上げればなかなかの色気を見せてくれる。 鏡のようにパーツが光り、夕日や緑がそこに映る様などを見れば、なかなかの横顔だ。 けっして目を引く美人ではないが、どこにでも連れていける相棒である。

さあ、ようやくこれで「魔物」との戦いは終焉を迎えるのだろうか。 あんまりあてにはならないけれど、まあひとまずは、しばらく休戦のようである。

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July 14, 2004

Tiffany Style / French Classic

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オークションに時おり Gem とか Jewelry という形容が出てくる。

まさか宝石とまで称される自転車部品があるとは、
ふつうはとても理解してもらえないだろう。

しかしこれは決して誇張ではない。

そのジュラルミンやアルミニウムの柔肌は
時おりプラチナのように艶かしく輝いて、
ひっそりと男心を誘惑するのである。

初恋の年頃に一度でもこれにとり憑かれてしまった男にとっては、
まるで恋人が少女の面影のまま目の前に現れたのと同じである。
ええい、もういくらでも払ってやる、と
おっちゃんは我を忘れてしまうのだ。

で、 ・・・また、ずいぶん払ってしまいました。

写真はあまりにも有名なユーレー・ジュビリーとストロングライト93。
フレンチの古典である。

Old school という表現がふさわしい、古きよき時代。
贅沢な素材に手のかかった工作、そして独創的で優れたデザインセンスが
ひとつひとつのちいさな部品に凝縮されている。

かくして宝石を身につけたティファニー・スタイルは、
ついに芳しいフランスの香りを醸し出し始めたのである。
すでにロードレーサーではなく、フレンチ・スポルティーフである。


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いやまて、と、きっと反論があるであろう。

ストロングライトやユーレーはまさにフレンチ・スポルティーフの典型であるが、
オルトリーブのサドルバック、ブルックス、そしてブルーメルのフラップ付き
マッドガードは、英国風クラブモデルを連想するスタイルだ。
さらにシュパーブのブレーキレバーや日東パール・ステムは
日本製とはいえ、イタリアン・スタイルを踏襲している。
フレンチ・クラシックとしては支離滅裂なアッセンブリーではないか。
これはスポルティーフかもしれないが、フレンチとは云えない。

しかし、だ。

見よ。思いのほか南フランス風な街角に似合うではないか。
どうだい。


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うむうむ、よしよし。
これでティファニー・スタイルは完成としよう。
こんなにエレガントな街乗りバイクはふたつとないぞ。

と、一息ついたが、まだまだ。
魔物との戦いは、さらに次の章があったのでありました。

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July 08, 2004

Tiffany Style / Road runner

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ネット・オークションなるものに出会ってしまった。

ヴィンテージとしか言いようのないパーツが売られているではないか。
もともとビョーキが再発しているところに、オイシイものがごろごろ並んでいる。

喰わないわけがない。

まずブルーメル・クラブ・スペシャル。
なんとティファニー・ブルーのマッドガードだ。
こんな色のブルーメルは見たことがない。これを逃したら二度と出会えないっ。
落札して、ふと気付いてみたら、とても泥除けとは思えない高値。
健常者からみれば、ただのぺらぺらのプラスチックにしかみえない。

・・・とてもカミさんには云えないな。

マファック・レーサーは流通が比較的多くて、オークション相場が出来ている。
ブレーキがセンタープルになると、俄然クラシック・ロードらしい雰囲気が高まる。

しかし使ってみるとマファックのパッドは効きがスポンジーで鳴きもひどい。
昔のプロレーサーは、これで本当にアルプスを下っていたのだろうか。

信じられない。 命懸けだ。

KOOLSTOP のパッドを20ドルも送料を払って取り寄せたが、これが正解。
急制動でたわむマファック・レーサーでも、ちゃんとクイックに効くのである。

ブレーキの性能はパッドにあり。  マチガイ無い。

ブルックス・スウィフトは新品をブレークインして
200kmも走らないうちにしっとりとオシリになじんだ。
これはいいサドルである。 もう手放せない。
これに乗ればレーサーパンツのパッドなど無用。
ユニクロあたりのチノパンツで一日走っても快適。

サドルは革に限る。 これもマチガイ無い。

そしてさらにハンドル周りをいじり始めた。
構成は変えていないが、いかにもクラシックなスパイスをちょいと効かせる。

バフ仕上げ」と「シェラック仕上げ」である。

シャンゼリゼあたりのアトリエに注文しないと手に入らない仕上げかと思っていたが、
やってみれば自分で簡単にできるもんである。
このヒミツの魔術については、またの機会に。

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というわけで、
はまったと思ったらあっというまに
ちょっとキュートなティファニー・スタイルのロード・ランナーになった。

しかしまだまだ序の口。
「魔物」との戦いは、さらに続くのであった。

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June 27, 2004

Zebra Style

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古いロードである。

「ロードレーサーにプラスチックの泥除けを付けたのが欲しいんです」と、
1985年ごろに上野の横尾双輪館でこしらえてもらったものだ。

とにかくチューブラーの乗り味を試したかったのだ。
べつだんレース志向はなかったし、クラブモデルのようなスタイルならチューブラーでお散歩しててもよかろうと。

そんならなにも横尾さんとこでなくてもよさそうなものだが、
広告写真のレーサーのまとまりのよさは横尾さんのホルクスが一番だった。
ツーリングモデルのように見えるが、じつは本気のレーサーなのよ、ってぇのが欲しかったのだった。

これを手に入れて、650Bランドナーはバラしてしまった。
舗装路でぶんぶんと音がするようなぶっといタイヤはもう要らなかった。


さて月日は流れて、ホコリまみれになったホルクス・レーサー。

さあ、かつて慣れ親しんだ「さいくりんぐ」をば、今またふただびやってやっかな。
というのが、2003年秋ごろのこと。
ぼろぼろのサドルとバーテープを取り替えて、タイヤを新調したところがこの写真である。

駆動系、ハブ、ピラーは初代デュラエース。リムはスーパーチャンピオンのルート。
ハンドルとステムが日東、
ブレーキはレバーがシュパーブ、アーチがグランコンペ。
ちょっとぼろの目立つブルーメルのマッドガード。その名をクラブ・スペシャル。
それに新しく買い込んだサンマルコ・リーガル。
ビットリアのチューブラーが、これが21世紀の写真だという唯一の証拠だ。


さぁ、ここから目まぐるしいパーツ変更のあり地獄が始まるのである。
カスタム・メイドの自転車をよく「魔物」というが、まさにそれ。
またもや取り憑かれてしまった。

というわけで、
白黒のコントラストがいやに目立つ、この頃のスタイルをとりあえず Zebra style と呼ぶことにしましたとさ。

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