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May 22, 2005

緊急特番!四角いテーパーの謎とは?

BBシャフトのテーパー寸法が問題だ!
というところまでいっていたトリプル化計画ですが、その後のオハナシを続けなければなりません。

ハナシを途中でほったらかしにしていたせいで、ひょっとしたら困ってる方がいるかもしれないなあ、となんだか嫌な予感もしてきました。 調べが甘いところもありますが、とりあえず、かまわず書いておきます。

前回までのあらすじ)
シュパーブのトリプル用BB (120mm) を手に入れてストロングライト49Dを取り付けた Yow であったが、BBを右いっぱいにセットして理想のチェーンライン 46mm にすると、左のクランクが寄りすぎてしまってあえなく挫折。 妥協して 45mm にセットして乗り始めたのだが、左右の脚幅が違いすぎて、う~ん、だめだこりゃ。 そもそもテーパーの寸法が違うために、想定の寸法がでていないのではないかと、いつも足元でくるくる回っている四角い顔の二人組に容疑がかけられてしまっているのだが・・・


◇ ◇ ◇

春とはいえまだまだ寒い3月のこと、押入れからごそごそと古いシャフトやクランクを出してきてはノギスで測り始めた Yow でありました。
先っぽの四角形の幅 (square size) と根元を測って、それにテーパーの斜め面の長さで sinθ の逆算をすればテーパー角 (taper angle) もわかるはずだ。
あれ?三角関数ってどうなってんだっけ・・・

「ボス! 容疑者を洗ったところ、こんなものが・・・

「なんだとぉ、テーパーってどれもこれも全部違うじゃないかぁ!

これじゃあ、ノギスを持ってお店を巡らない限り、どのBBを買ったところで宝くじだよねえ。 テーパー方式てのは困ったもんだ。

0.1 mm 単位の違いがどのくらい影響を与えるか、計算してみるとびっくりします。
たとえば、シュパーブとTAとでは、どのくらい嵌る深さが違うかというと (テーパー角=2°として)

(12.7-12.55) ÷ 2 ÷ tan2°= 2.15 (mm) の差

おなじクランクをわずか 0.1 mm 違うだけのシマノのシャフトにすると

(12.8-12.55) ÷ 2 ÷ tan2°= 3.58 (mm) の差

なんとわずか 0.1mm のテーパー違いでも 1.43mm チェーンラインが変わってしまう計算になります。

今回の事件では、シュパーブはシマノに比べてかなりテーパーが小さいので、2mm 以上も深く嵌ってしまったというわけです。 こいつはきっとカンパサイズのテーパーと呼ばれるイタリアン・マフィア風の一味だな。(ちと違う?)


「ボス・・・やっぱりクロですね。
で、どうします?

「うむむむむ・・・

と、そこに渋い濃紺のランドナーで颯爽と現れたのが我らがヒーロー bitvalleyjp さん。
(その節は、ほんとうにありがとうございました。 レポートの提出が遅れてすみません)

「49Dにシュパーブは使わないほうがいいですよ。
タンゲのBBならきっと合うことでしょう。

タンゲだけでなくTAなどもノギスで測ってくださり、テーパー寸法についてくわしく教えていただきました。 まさに地獄に仏。 ほんとうに有難いアドバイスを頂きました。

さらに、なんとありがたいことに bitvalleyjp さんからお手持ちのタンゲを譲って頂くことになりました。 シャフト長は 124.5mm。 テーパー寸法は シマノやTA に近く、サンツアーと同様にロックリングで固定するクラシックな外観。 これはぴったりだ!

テーパーの嵌り深さは 2mm 以上浅くなったうえに+4.5mm シャフトが長くなったおかげて、チェーンラインの調整は余裕のよっちゃん(古すぎ?)

というわけで、おかげさまで 一発解決!

ぴったり 46mm にチェーンラインをセットして、フロントディレイラーの変速はパシッと決まるようになりました。

左クランクとチェーンステーとのマージンも 11mm に落ち着き、左右のマージンの差は 6mm にまで縮まりました。 これならまったく脚に違和感はありません。

ちなみにQファクターは約 1cm 増えて 146mm 。 この約 1cm というのは、シャフト長が +4.5mm、テーパーの嵌り深さが 右が 2.0mm 、左が 2.3mm 浅くなった分の合計(+測定誤差)ということですね。 (タンゲのサイズは 12.80mm ではなく、本当は 12.70 が正しかったのかも。 もう取り付けたあとなので測りなおせませんが・・・) また、ストロングライト純正のトリプル用シャフト長が 125mm だ、というタレコミともつじつまが合ってきた。

「ボス! ついにやりましたね。


では、本日の教訓!

その一) シュパーブサイズ、カンパサイズのテーパーには気をつけよう。 彼らはあきらかに細いのだ。 スギノやストロングライトを嵌めると想定寸法より 2mm 以上奥までいってしまう。 うっかりすると底づきしてクランクに痕がつくかも。 (49Dだけでなく、プロダイでもヤバイです。 マジでご注意くださいませ)

その二) テーパーは測ってみるとぜんぶ違う。 これは、そういうものなのだ。 経験者に訊くほかに組み合わせの正解を知ることはできないのだ。 しかも経験者も、うまくいった次の日には苦労を忘れて走りにいってしまう。(え? 私だけ?)
そうやって21世紀の今日まで延々と人びとを悩ませ、そしてこれからも永遠に、テーパーの謎は解かれることは無いであろう。

その三) シールドベアリングのBBは、チェーンラインを調整できるのがイイ。
カップ&コーンのBBにこだわって古物のシャフトをコレクションするよりずっと楽チンだ。
そして、これこそがテーパーの謎を乗り越えて正義を手にするための唯一の方法かもしれないぞ。(やっと気が付きました)


ついでに番外) 記事は寝かせておいても完成しない。 さっさとアップロードしなさい。(ごめんなさい)

これにてトリプル化計画、一巻の終わりでございます。


追記) この記事にある測定値は、特価1,280円也の読取値0.05mm精度±0.1mmのノギスを使って、そろそろ老眼がやばいぜ、という測定者によって測定されたものです。 くれぐれも鵜呑みになさいませぬ様、お願いいたします。 (え? はなっから、あてにしてねえって?)

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Comments

Yowさん、こんにちは。
う~ん、やっぱり奥の深いお話でしたね。
BBにも相性があるなんて・・・参考になりますっ!ありがとうございました。

Posted by: Bennyx | May 23, 2005 09:47 AM

ストロングライトに合う国産BBがあるんですね~!マジ、驚きました。
最近の物は知りませんが、BBのテーパー角は、同一メーカーでもグレードによって違うこともあるので、話がややこしいです。
私は20年位前、シマノ600のクランクがカンパサイズになったのを機にカンパBBと組み合わせて使っていましたが、最近の物はどうなんでしょうね?

Posted by: 腹ポ@空モデラー | May 23, 2005 04:08 PM

Bennyx さん、どうも恐縮ですっ
ハナシを引っぱったわりには、オチがどうもだらしなくってすみません (^^;)

腹ポさん、
(ひそひそ)ひょっとしてカンパのBBはまだお手元にあります? ちょっとノギスをあててみていただけないかなあ・・・
上の表の?のところを埋めて「カンパ=シュパーブ」が事実かどうかを確かめたくて。


(この調子じゃあ、こんどは各社の寸法データを集めるのにはまったりして・・・
そりゃあ相手がテーパーだけに良くハマルでしょう! なんて洒落てるばあいか?>私

Posted by: Yow | May 24, 2005 12:15 AM

>ひょっとしてカンパのBBはまだお手元にあります?
レコードは現役で使用中・・・うちにはコッタレス抜きがストロングライトしかないので、Cレコで良ければ、今度の週末にでも測ってみましょうか?
レコードとCレコ、シャフト長は違いますが、テーパーは同じだったと思います。

Posted by: 腹ポ@空モデラー | May 24, 2005 12:39 PM

うーむ、なんか頭の痛い結果がでましたね。

私は、カンパ、サカエロイヤル、スギノマイティー、サンツアーシュパーブが同一テーパー角(いわゆる国際規格)で、スギノはプロダイ、マキシーが各々違うテーパー角を持ち、シマノは昔から独自規格のテーパー角を採用していたものの、7400系DURAから国際規格(2度)になったと記憶しています。

他にもサンツアーにはVXテーパーというものもありますが、TAやストロングライトと同様に果たしてどうなっているのか、知識がありません。

ただ、昔からクランクとBBシャフトは同一メーカーの物を使うべし、と言われていましたよね。


ところで私のロードレーサーコンパクトドライブ化計画はサンツアーシールドBBで試してみたところ、結局のところチェーンラインの問題ではなく、Qファクターの問題で挫折しました。(チェーンがクランクに当たってしまう!)

はあ・・・・(ため息です)


またデットストックを抱える羽目になりました。(とほほ・・・)

Posted by: Peter | May 24, 2005 08:13 PM

腹ポさん、ありがとうございます。
ぜんぜんいそぎませんので、思いついたときにでもちょっとお願いします。

Peter さん、
ひょっとして、デッドストックのなかにたくさんシャフトをお持ちだったりして?
ノギスって安くなりましたよねえ(って、なに言いたいの?)


え~っと、みなさん!
ちょっと押入れに眠っているシャフトを測って、データを集めてみませんか?
とりあえずアドレスなしのコメントでもOKなので、品名型式と測定値をここに書き込んでいただく、とかいうのはどうかな?

テーパーの先っぽの寸法だけでもデータが揃っていれば、それと手持ちのシャフトとの差を見れば、どのシャフトに替えればチェーンラインがどれだけ移動するかを、おおよそ予測できるようになりますよ。
テーパーの根っこと長さも測れれば角度も出るのでさらにいいですが、かなり測定精度が必要そうなので、先っぽだけ。
このさい経験と勘だけが頼りの古典テーパー界に風穴をあけようではないですか! って、そないに気張らんでもいいですが。 とくに現行のBBのテーパー寸法がわかるとありがたいと思うんですけどねえ。 どおでしょ?

0.1mm 単位の値が必要だから、ノギスくらいは必要になりますね・・・ホームセンターで高いノギスを選ぶふりしてちょっとあててみる(冒頭の写真参照)・・・なあんてのはいけませんよね (^^;)

気長にお待ちしてますう。

Posted by: Yow | May 25, 2005 02:08 AM

CレコのBBを計ろうと、クランクを外しにかかったら・・・ワンキー・レリーズのアーレンキーサイズ、7mmなのね・・・うちには無いよ(ioi)
とりあえず、アーレンキー買ってきます。

部品箱をゴソゴソしていたらマイティーらしきBBが・・・スクエア・サイズをノギスで計ったら12.6mmでした。
うちのノギス、計れるのは0.1mmまで・・・しかも、一度コンクリートの上に落としたから売り物にならないって、お店から貰ってきたものなので、精度も怪しいです(-_-;) 

Posted by: 腹ポ | May 29, 2005 10:00 AM

腹ポさん、どうもありがとうございます!
あらたな計算表とともにエントリーさせていただきます。

それはそうと、クランクはずしてまで測っていただかなくても・・・ みょうなプレッシャになってたらごめんなさい。 ほんとについでのときでけっこうですよ。

Posted by: Yow | May 30, 2005 12:32 AM

超遅レスですが興味深い内容でしたのであえてレスしました。
ながらく部品メーカーで技術系の仕事に携わっていたものです。
コッタレスBBシャフトのテーパーについては色々情報が錯綜しておりますが、基本的にはテーパー角は4°±公差(面勾配2°)で、角度には種類は有りません。 かつては海外製で角度の違う物も有りましたが、既に無いと言って良いでしょう。
テーパーの寸法測定は非常に難しくかつ精度が必要で、書かれている通り、2面幅の測定値が0.01mm違うと軸方向には0.143mm誤差が出る事になります、角度測定もしかりで、1ミクロンが計れるマイクロメータなどがないと正確に測定出来ません。
カンパは永らく自社サイズ1種類のテーパで、サイズ的にはISOテーパです。シュパーブ、マイティなどもISOテーパです。
サンツアーVxテーパはスギノマキシーテーパが元でJISテーパと呼ばれます、シマノはほとんどJISテーパですね。
プロダイは元々TAシクロツーリストに合わせており、ISOとJISの中間サイズです。
JIS D9403ではテーパ先端の2面幅は12.65(ISO)
13.25(JIS)となっていますが、実際には面取りや、面のコンケーブ加工の為実測は出来ないので、一定の長さ内側で測定して計算するのと、ゲージ嵌合で管理しています。

コッタレスBBシャフトを内製しているクランクメイカーはほとんど無く、外注生産しているので、メイカー違いで角度が異なると互換性問題が出るのでありえません。

Posted by: kaz | July 13, 2015 01:22 PM

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