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August 05, 2004

バフ仕上げの実際 (あるいは磨き派サイクリスト宣言)

みなさんこんにちは。 自転車いぢり応用講座のお時間です。

さて二回目の今日は、バフ仕上げです。
暑い夏には汗を流してツーリングしたりせずに、涼しい部屋にこもって金属磨きに挑戦というのはいかがでしょう。

「バフ」とは、グラインダーなど回転式の電動工具に取り付ける、フェルトや布などでできたドラム状の道具のことですが、これに研磨剤を塗りつけて金属の表面を鏡面に仕上げることをバフ掛け、バフ仕上げ、などと呼びます。 これで自転車のパーツをぴかぴかに磨き上げてやろうというわけです。


不思議なことに、バフ掛けについてネットワークを検索してみるとオートバイ部品の例ばかりで、自転車の例はほとんどありません。 パーツに対する思い入れはバイク乗りよりも自転車乗りの方のほうがずっと深いだろうと思いますが、そのパーツを磨くということに関してほとんど何も情報がないというのは、いったいどうしたことでしょう。 マニアにとっては言わずもがなの常識なのか、はたまた門外不出の奥義なのか。

しかしやってみると、金属の研磨というものは、ごくありふれた単純な作業なのです。 ちょっとした道具と指先の筋力、そして老眼に負けないメガネがあれば恐れることはありません。

もともとジュラルミンの生地のまま仕上げられたビンテージ・パーツなどは、砥ぎなおすことでオリジナルを超えた輝きになります。 ありきたりなブラック塗装やアルマイト仕上げのパーツも、ひと皮剥がせば見違えるような高級パーツになってしまいます。 そもそもシマノなどのコンポーネント・パーツのグレードも、その性能差よりもむしろ仕上げにかかる手間賃の差といってもよいくらいですから、ここはひとつ挑戦してみる価値があろうというものです。


ところで、すでにお気づきかとは思いますが、ワタクシはランドナー派でも床の間派でもなく、ましてや峠派でもレース派でもない、慢性の「磨き派サイクリスト」でございます。 クランクを一本磨き上げる、というだけで週末のサイクリングが終わったりすることもたびたびです。(そりゃサイクリングじゃねーだろ)

古ぼけたパーツが手に入るたびにウィルスが活性化し、思わずコンパウンドを手にとってしまうという、これはこわ~いビョーキです。 ふと気が付くと自転車の上から下までぴっかぴかに光ったパーツでないと気がすまなくなり、さらに吸い込んだアルミ粉の毒性によって物忘れがひどくなり、都合のいいことしか覚えていないという症状も。
このビョーキ、きっと伝染りますよお。 へっへっへ・・・

49D-0.jpg


はい。では、さっそく始めましょう。


1)道具を揃える


耐水ペーパー
表面の程度がよいパーツなら、800番、1500番、2000番のペーパーがあれば充分です。

気合をいれて塗装やアルマイトを剥ぐには、100番くらいの荒いものが必要です。 その場合には、200番、400番くらいのペーパーも必要になります。 必要になりそうな番手を全部そろえても500円くらいのものでしょう。

コンパウンド
ホームセンターに行くといろいろなコンパウンドがありますが、2000番のペーパーの砥ぎ目を消してくれる程度の荒さのものが必要です。 あまり粒子の細かい高級なものはだめです。 ピカールのラビング・コンパウンドはどこにでもありますが、これがちょうどよいようです。 うちの近所では280円でした。

青棒
「青棒」という商品名で売ってます。 成分は酸化クロムだそうです。 いかにも毒っぽいですね。 注意して使いましょう。 これをバフにこすり付けて鏡面仕上げをします。 600円くらいです。

ミニ・ルーター
自転車部品は比較的小ぶりなので本格的な電動工具がなくても大丈夫です。 私は近所のホームセンターで一番安いミニ・ルーターを買って来ました。 お手持ちの電動工具があればそれで結構ですが、ディレイラーの細部などをやっつけるには、シルバー細工などに使うミニ・ルーターが便利です。 ちいさなフェルト・バフが付け替え用のビットとして売られています。

ミニ・ルーターは、ひとつあると何かと便利です。 たとえば、砥石のビットを使うとチェンリングの面取りなどのちょっとした工作に使えますし、金属ブラシのビットは鉄部品の錆取りと研磨ができます。 また、アルミ部品に真鍮ブラシを掛けると梨地仕上げなったりします。 もちろんワイングラスにダイヤモンド・ビットで絵を描いて夏休みの工作にするのにも使えますね。
安いミニ・ルーターは4000円程度からありますが、いろいろなビットを買い揃えると意外と高くつきますのでご注意を。

ぼろきれ
とにかく、なにかと使います。


2)洗浄しておく

さて、まずはパーツを分解して洗浄しておきます。

新品のパーツに手を掛ける場合でも油分を落としておいたほうがよいと思います。 食器洗い洗剤でも深夜のTVショップで売っているようなお掃除洗剤でもなんでもOKです。

写真は、相場の半値で手に入ったストロングライト49Dをニヤニヤしながら洗浄したところです。 表面全体に腐食による細かい白化があり、キズもありますね。 さあ、どこまで研げばきれいになるでしょうか。 やってみましょう。

49D-1.jpg


3)下地を作る

耐水ペーパーに水をつけて磨くことを「水砥ぎ」といいます。 金属にペーパー掛けするときは水砥ぎが基本です。

削られた粉が水に流されることでペーパーの目が詰まることを防ぎ、砥ぎ味が落ちるのを防ぐことができます。 また摩擦で表面温度が上がるのを防ぐ効果もあるので、これも砥ぎ味が一定することと関係があるような気がします。 なにより削り粉が飛び散らず水に溶けてくれることが、後の片付けをラクチンにしてくれます。 包丁を研ぐときのように、遠慮せずに水を使うのがコツです。

砥ぐ相手に応じた番手を選びましょう。

パーツ表面の具合を見ながら、細かい番手のペーパーから順番に水砥ぎして様子を確認するのがよいと思います。 2000番でじゅうぶん平滑になるなら、それがいちばんラクチンです。
キズが取りきれなかったり、腐食が深いようなら1500番、800番と番号を半分に落としながら順に試してみます。

アルマイトや塗装を剥がすには、100番かそれ以下のもっと荒い番手でバリバリやっていきます。 ひたすら根性です。 私はステムやクランクのアルマイトを剥がしてみましたが、だいたい20~30分も格闘すればなんとかなります。
でもディレイラーのように複雑な形状のものは、ちょっとやる気がでませんよね。 ・・・ 私は避けて通ります。

写真は、ストロングライト49Dを2000番で砥いでみたところです。 よく見ると腐食あとの微小なピンホールが残っていますが、浅いのでよしとします。 キズもだいぶ目立たなくなりました。 なにせ40年も前のツワモノですから、少々のキズは貫禄ということにしましょう。

49D-2.jpg

4)砥ぐ

下地を作ったときの番手をスタートにして、倍掛けの番手で砥ぎ目を消していく作業です。 たとえば100番がスタートなら、200番、400番、800番、1500番と番手を細かくしながら水砥ぎします。 番手を替えるつど、ざっと洗浄しておきましょう。 最後に2000番くらいまで仕上がればペーパー掛けは終わりです。 

次に2000番の砥ぎ目を消すためにコンパウンドを使います。 コンパウンドをパーツ全体に塗りたくってから、指の腹で砥いでいくのが私流の研磨方法です。 指が真っ黒になるのがお嫌いな方はボロキレでやってください。

ピカールのラビング・コンパウンドは触ってみると粒子のざらざらが分かります。 研ぐうちにコンパウンドが真っ黒になり、ざらざら感がなくなり、やがて消えてなくなってしまいます。 顔がぼんやり映る程度に仕上がれば上出来です。

ボロキレでふき取っったあと、よく洗浄しておきます。

写真はコンパウンドで磨いた後の49Dです。 だいぶ色っぽいお肌になってきましたね。

49D-3.jpg

4)仕上げ磨き

さあ、いよいよ感動の瞬間です。

ルーターにバフをセットし、回転させて青棒をこすり付けます。 これでパーツ表面を軽ぅくこすってやると、みるみる艶がでてきます。 コンパウンドでもじゅうぶん仕上がっているようにみえますが、うっすら残っていた曇りがバフ掛けによってきれいに晴れてきます。 これで顔がはっきり映るようになるはずです。

最後にボロキレで青棒のカスをふき取り、よく洗浄しておきます。 見事な鏡面仕上げの出来上がりです。

さぁ、40年の時を越えてよみがえった49Dをご覧あれ。 おっと、うっかり触ると指紋がつきますよ。

49D-6.jpg

ここまできて「いまひとつ」というときもあるかもしれません。 それはたぶん下地が充分に平滑に出来上がっていなかったということです。 あるいは最初のところの砥ぎあとが消しこめずに残っているのではないでしょうか?

あきらめずにスタートに戻って何度でも納得がいくまで砥いでください。  自転車部品の寸法精度というのはたいしたものではありませんから、ちょっとぐらい削りすぎても大丈夫です。 いくらでもやり直しがききます。  やり直しのきく人生ってえやつです。

繰り返し繰り返し砥いでいるうちに、だんだんと精神が集中し、忍耐力が増し、そしてやがて貴方に悟りの境地が訪れることでしょう。

では、また。

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Comments

Great post! I’ll subscribe right now wth my feedreader software!

Posted by: LnddMiles | July 27, 2009 at 04:55 PM

おもしろい記事ですね。日本ではどれくらいの人が磨いているのか分かりませんが、海外ではオールドパーツを磨く人が結構いるみたいです。ところでアルマイトを剥がして磨き上げると直後は綺麗だと思うのですが、アルマイトがないのですぐに酸化して曇ってしまうと思うのですが何か工夫があるのでしょうか。それとも頻繁に磨いているのですか。

Posted by: フィアメ | December 17, 2010 at 08:51 AM

フィアメさん、コメントありがとうございます!
6年もまえの記事を見ていただけてるとは… 感慨深いです。

近頃は新製品にもポリッシュ仕上げを標榜するものが目立ってきて、なんとなく追い風のトレンドが感じられます。 金属をみると磨きたくなるという同病の方が、どうやらじつはかなり潜在していたようですね。 おかげさまでワタクシも当時ほどヘンタイ扱いされなくなりました =)

さて磨き上げたあとの手入れについてはお察しの通り、手元にいつも「磨きクロス」を置いて、暇さえあればナデナデしております。
磨き派サイクリストは、まだまだ健在でございます♪

海外で磨く方が多いというのは気づきませんでしたが、ヨーロッパの方はそうかもしれませんね。

なるだけ上等なモノを手に入れて、日ごろからぴかぴかに手入れして大事にながく使う、というのは戦前までの日本人にも共通にあったポリシーのような気がしているのですが、ささやかながらワタクシもこれを継承したいものだな、と思います。

Posted by: Yow | December 19, 2010 at 07:25 PM

「磨き派サイクリスト」に憧れ磨き道具一式を購入。
1点、青棒の使い方を確認させて頂けないでしょうか。
・・・
●青棒をパフにこすりつけて
 これは以下で良いのですか?。
 ①パフを回転させながら青棒をパフにこすりつけて
 ②パーツにパフを軽くこする

青棒が車の固形ワックスのようなものであればパフに
こすりつけた様が視覚的に理解できるのですが
硬い青棒を回転しているパフにこすってもこすれている
のか分からなくこれで良いのか??という感じです。

・・・
基本的な原理なりを理解していないので教えて頂ければ大変助かります。
今、1985年のVITUSを磨いているところです。
どうか宜しくお願いいたします。 

Posted by: takeonekats | April 09, 2011 at 06:30 PM

takeonekats さん、コメントありがとうございます。
元祖アルミフレームですねぇ。面白そう。

ご質問には「それでいいのだ!」でおしまいなのですが、わかりやすい動画を見つけたのでリンクしてみます。
"Aluminium Polishing Tutorial - To Mirror Finish"
(温度が上がるように高速で回せ、といっているようです)

そしてこちらが、ワタクシ的にはもっとも「美しい」と思うバフがけ動画。
(たぶんご同意いただけると思います…)
"セルフレーム バフ掛け(仕上げ)"


Posted by: Yow | April 09, 2011 at 11:39 PM

ご丁寧に動画のリンク先までありがとうございました。
”こすりつける”の具合が全く足りておりませんでした。パフへのこすりつけ方やこすり具合まで分かりました。なるほど~という感じです。耐水ペーパーで磨くともありましたがペーパーで磨いて良いのか?、どうなるのだろう?というレベルでしたのでこれも(他のYOU TUBEでしたが)分かりました。お聞きして良かったです。
VITUSは、そこそこ綺麗ではありますが”綺麗”なレベル。これにて輝きをもたせられそうです。
ありがとうございました。

Posted by: takeonekats | April 10, 2011 at 10:11 PM

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