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July 24, 2004

シェラック仕上げの実際

みなさんこんにちは。 自転車いぢり応用講座のお時間です。

さて今回は、シェラック仕上げです。
夏休みの工作に、ハンドルバーのシェラック塗りに挑戦というのはいかがでしょう。

シェラック (shellac) というのは南米に生息するカイガラムシの体液をアルコールに溶かして作られた、完全にオーガニックな仕上げ用のニスで、古くから家具やバイオリンなどに使われているものです。 口に入れても安全なことから、キャンディのつや出しにも使われていたそうです。 最近はアレルギー予防のためのインテリア仕上げ用として注目されています。

自転車ではこれをハンドルバーの仕上げに使います。 ルネルスやアレックスサンジェの自転車をご存知の方なら、そのハンドルバーがシェラックで仕上げられていることはよくご存知でしょう。 最近はアメリカのカスタムメイド自転車でも流行しはじめているようです。

シェラックニスはアルコールと熱に弱い性質がありますが、耐水性に優れています。 ほつれやすく汚れやすいコットンのバーテープをシェラックで保護すると、雨や汗に強く、何年たっても古びない美しいハンドルバーに仕上げることができるのです。

コットンのバーテープを巻き、シェラックを塗って仕上げたハンドルは、革やコルクを巻いたものよりも握りが細く仕上がります。 細い握りを好むのは、なにも競輪選手だけに限ったことではありません。 路面の状況やタイヤの挙動がよく把握でき、小柄な手でもしっかりと握ることができる安心感があります。 また細く仕上がったハンドルバーは、なによりもそのシルエットがエレガントに見えます。

これは何十年もまえから使われてきた方法ですが、今でもなおシェラック仕上げのハンドルが好まれるのは、単にクラシックな美しさだけではなく、何より安くて長持ちするカシコイ方法であるということが大きな理由といえるでしょう。また、オーガニックな材料だけで仕上げることでアレルギーの心配がないことが、近年アメリカで流行し始めている理由のひとつかもしれません。

shellac1.jpg

では、さっそくはじめましょう。

1)材料をそろえる

 ・コットンのバーテープ
綿のバーテープは入手しにくくなってきましたが、西はイトーサイクル、東はアルプスあたりなら扱っているようです。 また Velox のテープをまだ売っている海外サイトがありますから、高い送料に目をつぶってまとめ買いしておくのもひとつの方法です。 しかしどうせ上からニスで仕上げるのですから、なにも苦労してブランドを買いあさるだけが手ではありません。 近所の薬局に行って、スポーツ用のテーピング・テープを買ってきましょう。 バーテープよりもっと細い仕上がりが期待できます。 (私はやったことないですが)

 ・シェラックニス
これは近所のホームセンターでは見つからないことが多いです。東京近辺では渋谷のハンズにありました。
赤茶色に仕上げたい場合は無漂白の赤いやつ、カラーのバーテープを巻いてその色を生かしたい場合は漂白された白いシェラックを選びます。

 ・刷毛、溶き皿
ニス塗り用の3cmから5cm幅くらいの刷毛があればOKです。適当な溶き皿に必要量づつニスを出して使います。

 ・アルコール
刷毛を洗うためにアルコールが必要です。近所の薬局で消毒用のエタノールを買ってきましょう。
焼酎やウォッカをつかってもいいかもしれませんが、私は飲むほうを選びます。
ちなみにシェラックニスの成分は飲める酒だそうですが、いい匂いがするからといって味見するのはやめたほうがよいでしょう。

shellac2.jpg


2)バーテープをまく
バーエンドから巻き始め、握るときに手が内側に回る方向に向かって巻きます。 ブレーキレバーは台座だけ取り付け、本体ははずしておきます。

3)ヘンプを巻く
今回はシェラック塗りだけでなく、最新流行(?)の「ヘンプ巻き」も、あわせてご紹介することにしましょう。

「ヘンプ (hemp twine) 」とは大麻の紐のことです。 テープの巻き終わりがバラけるのを避けるためにビニールテープなどを巻いておくことが多いですが、そのかわりにヘンプを巻くとなんとも工芸的な美しい仕上がりになります。
ヘンプは手芸のお店で手に入ります。渋谷のハンズにはルーマニア製の1mmのものがありました。

巻き方は簡単です。
   ・まず適当な長さにヘンプを切って、輪っかを作っておきます。
   ・バーテープの巻き終わり3cmくらいのところで輪っかの上から
    ヘンプを4回ほど巻きつけます。
   ・ヘンプの巻き始めを輪にとおして巻きつけたヘンプの下を通して
    引き抜くと、ヘンプが固定されます。
   ・同じ方法であと4回ほどヘンプを巻き、巻き終わりを輪に通して
    引き抜くと、両側が固定されます。
   ・緩みのないようにしっかりと巻きつけていくのがコツです。

        (補記: こちらにくわしい解説を書きました)

4)シェラックを塗る
瓶から出したシェラックをそのまま塗るだけですが、1回目はほとんどバーテープに吸い取られてしまいます。
1~2時間もすると乾きますので、2回目の塗り重ねをします。 
むらにならないように、薄く塗っていくのがコツです。 ヘンプの上にも塗って固めます。

5)シェラックを塗り続ける
あとは、お好みの色になるまで、ひたすら塗り重ねていきます。 5回目くらいでいい感じになってきます。
ハニー色の革サドルと見比べながら、色合いを合わせるとたいへんオシャレです。

焦らずにゆっくり乾燥させながら、何日もかけて楽しみましょう。
いいかげんに塗り飽きたら、バーエンドを叩き込み、ブレーキレバーを取り付けて完成です。

このように、シェラック塗りはたいへん簡単な作業なのですが、乾燥をまって塗り重ねていくのにゆったりとした時間をかける必要があります。 こんな作業をショップに頼むと、きっと嫌な顔をされるでしょうね。 自分でやってしまいましょう。 
作業もまったり、出来上がりを眺めてまったりと、アルコールの匂いを嗅ぎながら贅沢な時間を過ごしてみるのも、たまにはよろしいのではないでしょうか。

ではまた。

参考資料) How to shellac your handlebars

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Comments

はじめまして
杉並在住の佐藤といいます。
30年前のランドナーを現在レストアしています。古いパーツなどネットで探してる時にこのサイトを拝見しました。先週、フレームのバフが終わり週末晴れたら塗装の予定です。パーツは、石油で脱脂して夜シコシコ磨いてます。このサイトはレストアに大変参考になります。ただヘンプの巻き方がいまひとつ理解出来ないのですが、詳しくお教え頂けませんでしょうか?よろしくお願いします。

Posted by: 佐藤 | October 13, 2004 at 12:06 PM

佐藤さん、ありがとうございます。少しでもお役に立っていると思うとヤル気が出ます!
ヘンプ巻きの方法は、やってみると「なぁんだ」ってなもんですが、たしかに文章ではわかりにくいですね。 ちょっと時間をください。 近いうちに絵解きで説明してみます。

Posted by: Yow | October 13, 2004 at 10:51 PM

はじめまして。
シェラック仕上げとヘンプ巻きというのをこのHPで知りました。
早速やってみたのですが、凄くかっこよくまた機能的で大満足してます。
感謝の気持ちで一杯です。ありがとうございました。お礼を一言言いたくて書き込みました。

書き込んだ理由はもう一つありまして、ヘンプの巻き方についてです。
すでに図解でご説明の方法でOkなんですが、あの方法はベストでは
無いというかもうちょっと簡単な方法がございます。

巻き始める側には輪っかを用意する必要は無く、やや長めに余裕を残した部分から
巻き始めますが、一周目でクロスさせます。端に近い側を下にします。
3・4周させてから余分をカットします。そのまま巻いていけばカットされた部分は
完全に隠れてしまいます。輪っかは必要ありません。

巻き終わり部分はご説明の通り、輪っかで引っ張って内側へ隠します。
輪っかはナイロン製の釣り糸のような表面がなめらかなモノで用意しておいた
方がやりやすいですし、うまくいきます。
コツはギリギリまで引っ張っておいて、5mm程度だけ残してから最終的に
輪っかを引き抜いて端を隠すことです。後でカットするとキレイにならない場合が
ありますし、せっかく巻いた部分を傷つけてしまうことがあります。

この巻き方は、釣りザオ製作過程での全世界共通の伝統的な方法です。
「スレッドの巻き方」なんて言葉で検索するといくらでも図解・画像が出てくると
思いますので僕の下手な文章で伝わらない場合には調べてみてください。

全体的なコツとしては、ヘンプにある程度テンションをかけながら巻くことです。

より美しくより簡単な方法ですので知っておいていいと思いました。
参考にして頂けると嬉しいです。

では失礼します

Posted by: TK | May 19, 2005 at 09:03 PM

TKさん、どうもありがとうございます。

おっしゃるとおり、じつは何回かやっているうちに、巻き始めは輪っかなしでいいはずだとは思っていたのですが、どうもぶきっちょなせいか途中でスルッとほどけてしまうこともあったもんで、両側わっか方式に落ち着いたという次第です。 やはりこのあたりが自己流の限界というところでしょうね。

それにしても、釣り竿の「スレッドの巻き方」にルーツがあったなんて、思いもよりませんでした。
なるほど検索してみると、美しく巻き上げるためのコツがいろいろとあるんですね。
TKさんに教えていただけなければ一生知らないままでいたことでしょう。 ありがとうございます。
ご覧いただいているみなさんにも、きっと参考になることと思います。

こんな拙文でも書いてみてよかったなあ。
しみじみ感動してます。

Posted by: Yow | May 20, 2005 at 11:35 PM

はじめまして Huret2100と申します。たまたま拝見してその写真の綺麗さ、内容の楽しさに何か心の安らぎを覚えております。興味深いブログをありがとうございます。トリプルのスイートスポットのあたりとか「そうそう」と思いましたし、サンプレのピラーのくだりではおもわず笑ってしまいました。なに笑ってるのかと家人が申しますものですから、これを見てください、といいますと彼女は首を振って立ち去ってしまいました。まあ仕方ないです。 でも自転車って楽しいですね。更新楽しみにしております。

Posted by: Huret2100 | September 18, 2005 at 11:09 AM

Huret2100さん、いらっしゃいませ!
そうですか、首を振ってオシマイですか。 やっぱり。 ウチも「これはすごいんだよ」といくら説明しても「ふ~ん」ですよ。
以前にニュージーランドのサイクリストとそんなハナシをしたときに「タンデムつくって乗せちゃえばいいじゃない」とあっさり言われましたが・・・ (^^;)

Posted by: Yow | September 19, 2005 at 02:59 PM

皮のバーテープにするか白のバーテープにシュラックにす塗りにするか悩んでここ半年。昨日からヘンプ巻きとシュラックにす塗りにチャレンジしています。一日ひと塗りで週末には完成予定です。サンジェのフレンチブルーにはやはりシュラックにすですね。今回、このブログが役立ちました。ありがとうございました。

Posted by: BD-1 | September 21, 2005 at 09:25 PM

BD-1さん、こちらこそ。 お役に立ててうれしいです。
楽しい週末になりそうですね。 うちもこすったところを補修しようかな。
・・・あれぇ?ひょっとしてサンジェのオーナーさんですか?

Posted by: Yow | September 21, 2005 at 11:14 PM

こんばんは
BD-1です。シュラックニスを二回程塗りました。明日の土曜日で最終にしようかと思います。塗り方として『薄く塗るとよい』とありましたが難しいです。多少むらがでそうですが、明日は慎重に塗ろうと思います。そうそうご指摘とおりサンジェ所有しております。もっぱらBD-1に乗ってポタリングしていることが多いですが。

Posted by: BD-1 | September 23, 2005 at 11:10 PM

みなさんすごい自転車をもってらっしゃいますねえ。 となりの芝生はものすご~く青いなあ・・・ (^^)

サンジェにシェラックはスタンダードだとしても、サンジェにヘンプ巻きは世界初!の試みかもしれませんよ。 できあがりが楽しみですね。

Posted by: Yow | September 24, 2005 at 05:49 PM

シェラックニス塗り完成いたしました。次回の教訓としまして①薄め液を少し入れると塗りやすい。②乾燥しないうちに同じところを塗らない→むらになります。以上、ありがとうございました。

Posted by: BD-1 | September 29, 2005 at 09:04 PM

むらにならないように塗るのは意外とむつかしいですね。 バーは曲面だしテープはでこぼこしているのでなおさらです。
これは思いつきですが、逆に、しっかり乾燥したところで軽くペーパーを当ててやると、バイオリンのようなグラデーションにできるかもしれませんよ。
いずれにしても完成を急がずにゆっくり乾燥させながら、ですね。

Posted by: Yow | October 02, 2005 at 12:58 PM

こんばんは
先ほど、『あなじて』(自転車のサイト)に投稿いたしました。一度、お時間があるときに覗いてみてください。シェラックニスは思ったよりうまく塗れたのではないかと思っております。小径車のポジショニングも参考になります。

Posted by: BD-1 | October 09, 2005 at 09:40 PM

画像掲示板で見つけました。 「アレックス・サンジェでポタリング」なんて、ん~~、こういうゼイタクはステキですねえ (^^)

Posted by: Yow | October 10, 2005 at 09:07 PM

こんばんは 確認していただいたようですねありがとうございます。ニスの塗り具合いかがでしたでしょうか?使用していていくうちに日焼けしてよい感じになるのではないかと思い3回塗りで止めています。ところで磨き布はどういったところで購入されたのでしょうか?当方、大阪ですがあちこち探しているのですが見当たりません。近々、東急ハンズに出かけようと思いますが、販売店の情報がありましたらご教授ください。追伸 あのサイトには『魔物』を投稿される方がおられます。ときどきチェックしていただければ楽しいですよ(イギリスのヒューポーターなど)。

Posted by: BD-1 | October 10, 2005 at 09:57 PM

シェラックニスは製品によって赤みに違いがあるようで、ウチで買ったやつでは5回くらいのかさね塗りで BD-1 さんのサンジェと同じくらいになってます。

そうそう、シェラックの赤みがかった色は、夕日があたるとちょっとした味わいを見せてくれますよ。 これは他のバーテープにはない楽しみ (^^)

磨きクロスは 光陽社さん ( http://www.koyo-sha.co.jp/ ) の製品で、大阪にも営業所があるようですよ。 私は近所のホームセンターで見つけました。 検索するとネット通販でも見つかりますが、どういうわけだかアホみたいに高いですね。

Posted by: Yow | October 11, 2005 at 12:44 AM

Yow様
磨きクロスの件 通販でありましたので注文いたしました。情報提供ありがとうございました。また、なにかありましたらよろしくお願いいたします。

Posted by: BD-1 | October 11, 2005 at 09:07 PM

こんばんはYow様
本日、大阪の服部緑地というところでシクロジャンブルという旧車の会合(フリーマーケットと愛車の自慢大会のような?趣旨は違うかもしれません)があり見学に行ってきました。TOEIの所有者が多く、50周年モデルも見ることができました。また、50周年モデルのバーテープがシェラックニスで塗られており、さすがにプロのなす技に感心しておりました。その他、NAGASAWAのロードフレームが有ったり、旧車パーツも沢山出品されていました。ブルプロが4500円ほどで売られており、一瞬のうちに売り切れでした。物欲を抑えるのが大変でしたが満足した一日でした。

Posted by: BD-1 | November 27, 2005 at 10:25 PM

え?旧車パーツが沢山、ブルプロ4500円、ひええ! ・・・よくぞご無事で (^!^;)
関戸橋や世田谷も怖いが、大阪もおっかねえんですね。

Posted by: Yow | November 28, 2005 at 10:45 PM

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